中国語の源流を求めて (4/5)母系で見る
遺伝子は両親から引き継がれますが父親のmtDNAは破棄されます。その理由はmtDNAが体温への熱配分を司っており気候による環境差を考えたばあい移動が少ない女性のmtDNAの方が現地環境に適しているからです。
図中の線で漢民族の女性は南北で大きな違いがあることが分かります。また東西でも違いがあります。しかし⑥の四川省とチベットの間を除けば差はそれほどは無いようです。この濃い違いはチベット高原の影響によるものと考えられます。
mtDNAは大きくI・II・IIIで分けられています。その分かれ方は気候帯とほぼ一致します。
Iが秦嶺淮河線に該当します。秦嶺淮河線は中国の農業を水耕稲作と麦作に分ける線です。北側が乾燥地帯南側が年間降雨量が1000mmを越える地帯です。
IIは嶺南山脈で分かれる温帯と亜熱帯の線です。この山脈の南方では昔はマラリアなどの熱帯病がはびこっていました。
IIIは不思議な地域です。気候的には黄河中流域と同じ温帯乾燥帯ですがここだけが囲まれています。エリアは河北省と山西省を含んでいます。
中華民族の始祖黄帝・炎帝やシュウウの逸話が多く残されており司馬遷も調査に訪れたことがあります。また古中国語の音韻構造の再構築で名を成したカールグレンはこの辺りを入念に調べました。この辺りで話される晋語には漢人最初の王朝「夏」の名残が残っていると言われています。
一方ではこの地は南北朝の北魏の首都から唐の建国の地と常に鮮卑族の活躍する場所でした。現在鮮卑の人は朝鮮族を除きほとんどが漢人戸籍に組み入れられています。そのせいかも知れません。
母親が子供に伝えるもう一つのものが母語の音韻体系です。子供は1才半で母語の音韻体系を習得し他の言語の音韻を排除するようになります。このmtDNAの違いが奇しくも中国語の方言の分布に一致する事がそれを物語っています。
→最終回 南北の融合
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