言葉の誕生
唇音を多用するオランウータンの会話 |
つまり人類はmt-Eveが話していた社会の言葉を母語として受け継いで来たことになります。
もっとも古い言葉の形を保っているのはアフリカで現在も太古と同じ狩猟採取の生活をしているコイサン族の言葉だと言われています。この言葉は多くの音素と唇を吸うような吸着音を持つ言葉として有名です。実は最近オランウータンもこの吸着音を使ってコミュニケーションしていることが分かりました。
オランウータンは唇や舌や顎などを変化させて子音のような音を使いコミュニケーションをします。映画「ブッシュマン」を見た人ならコイサン語のチュチュという唇を吸って出す音やタ・タ・という舌の音を思い出されるでしょう。
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オランウータンから吸着音の言葉が5000パターンほどが見つかっています。パターンから意味を解析したいのですがしかし残念なことに母音を伴わない子音だけの分析は難しいようです。
彼らは同じ意味をいくつかのパターンで使い分け、双方で確認し合うようです。例えば[自動車]なら「自動車」以外に[カー]や[乗り物]など同じ意味を交互に言って確認をするそうです。そうでないと相手が理解したか心配なようです。
これは音韻体系が未熟なせいかも知れません。または母語の発音が群れ全体で共有されていない可能性もあります。しかし言葉は人類が直立するようになり声門が下がったお陰で話せるようになったという説に疑問を投げかけます。
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言語は知恵により生まれると思います。人間が話すような複雑な言語は社会で認知されなければ成り立ちません。それには言語の構造化が必要です。
チンパンジーと枝分かれした猿人の末裔は華奢な体型でした。更にチンパンジーとの生存競争に負けたせいか彼らは平地に降りざるをえませんでした。彼らはサバンナで生き残るために何かをする必要がありました。彼らが苦渋の決断をしたのが火との接近だったと思います。火は今でも動物をよせつけません。なぜか裸の猿となってしまった彼らには寒さと肉食獣から自分たちを守る火との暮らしが必然だったのでしょう。
火は燃やす物を要求します。彼らはせっせと枯れ木を運んだのでしょう。枯れ木を運ぶ途中で枯れ木が武器にもなることを発見します。更に薪で暖まった石が役に立つことにも気づきます。
200万年前頃になると原人は石を更に使いやすいように加工します。割れて尖った石をツルを使って棒に縛りつけます。槍や斧の完成です。もうこの時代の人類は薬用植物などの豊富な知識を持っていましたから弁別能力は十分に備わっていたはずです。そして彼らが物や出来事に名前をつけて互いに交流するのは自然の成り行きだったでしょう。
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人類の言語の発生に関する議論は学術界ではタブーだそうです。しかし石の加工が始まった頃と相前後して人類の現在につながる言語が生まれたような気がします。
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