翻訳料金と品質と作業時間
日本翻訳連盟の白書より編集 |
Google翻訳の日英・英日の精度はせいぜい50%程度のものです。天気予報のように当たるかどうか分かりません。それでも使うのは単語のヒントや数字の写し間違いを防ぐためです。
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さて翻訳とはどの程度のかせぎになるのでしょうか。
以前にも言いましたがサラリーマンになって社内で翻訳もして営業もこなすような仕事の方が収入はぐっと高くなります。しかし色々な理由から在宅で仕事をしたい。人とのつきあいが苦手な人もいます。そのような場合、どれほどの稼ぎが期待できるでしょうか。
翻訳料金はピンからキリです。
翻訳の質にもピンからキリがあるでしょう。しかし翻訳会社が受注する価格も個人翻訳者が受け取る価格も大体の範囲があるようです。今回は私が加盟している日本翻訳連盟の2013年度版の翻訳白書から考えてみました。
これによりますと、翻訳会社が企業から英文和訳を受注する単価は、日本語訳文400文字で2500円から4000円とあります(54%がこの中に入ります)。その中間値は3250円です。
一方の和文英訳は原文日本語1字が13円から17円未満が一番多く、平均を15円としますと、400文字の日本語原稿は英語に翻訳されると6000円になります。
400字の日本語でみると英和は3250円、和英は6000円になります。
翻訳会社に納入する個人翻訳者の納入価格はとなると、私の経験も含めての算定ですが、英文和訳が1760円、一方の和文英訳は3200円になります。英文和訳も和文英訳も個人翻訳者が翻訳会社から受け取る金額は翻訳会社が顧客に納入する価格の大体54%になります。400字の日本語でみると英和は1760円、和英は3200円です。
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翻訳会社の費用:
翻訳会社は個人翻訳者の訳したものをそのまま顧客に納入する訳ではありません。
会社が雇っているチェッカーが居てチェックをしているはずです。その代表的なものがネーティブチェックです。翻訳会社がネーティブチェックを含めて校正にいくら使っているかと言いますと、ネーティブチェックは平均で400文字の日本語に対し校正をも含めて1870円というのが翻訳白書に書いてある相場です。それに基づきまとめたのがブログの図です。
実際の校正に翻訳会社がどれだけコストを投入するかは分かりませんが、翻訳後の最終チェックにかける時間を自分の場合で考えると翻訳されたものの翻訳時間の3割前後がかかるのではないかと思います。とうぜん校正に時間をかけない手もありますが、その場合の翻訳者の質が高くなり、翻訳者に渡す翻訳料が高くなります。そこで自身の場合を考えて翻訳料金の3割にしました。
私の場合日中の翻訳の訂正率は0.3%程度ですが、ネーティブチェックと技術チェックが入りますので、誤訳が少いからと言っても手取りの金が増えるようなことはあまりないようです。
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中国語関連の翻訳が中国人留学生や中国の大学の下請けが増えたことにより仕事量が減っています。それで私は英語関係の翻訳にシフトしたのですが、最初は大変に苦労をしました。一定以上の品質のモノを作るとなるとものすごく時間がかかります。
翻訳料金は当初から日本語換算で400文字で2500円と変わりません。
しかし翻訳を受注し始めた頃は、400文字に日本語に対し、大体で2時間から2時間半がかかっていました。時給1000円或いはそれ以下でしたから、パートの仕事と変わりませんでした。
それでもコツコツと仕事をこなしてきたおかげで、最近は1時間400字程度のスピードでこなすことができるようになりました。このペースで仕事ができるならまあまあの成績です。
そこで料金・品質・作業時間の関係を考えてみました。
例えば日本語3200文字の翻訳なら8時間でこなせます。すると以下のように時間の配分が可能です。
まず2時間を原稿よみとTradosへの読み込み、Google翻訳のTradosへの適用などの準備作業に使います。それと同時にWikipediaなどで用語を一括TradosのMultiTermという組み込みソフトに入れておきます。こちらもGoogle翻訳を使ってエクセルのフォーマットで読み込むのは同じですが、MultiTermの場合は訳文として現れず、原文の中に該当の単語があると表示されそれを適用できます。
(ここで大事なのはGoogle 翻訳を使うと原稿がGoogle に読み込まれてしまい将来絶対に再利用されないと保障できないことです。顧客によってはネット翻訳を禁じています。要求がなくても依頼原稿の内容によってGoogle 翻訳は使わないようにしています)
次の2時間がTradosでの翻訳作業です。この段階で全てを訳しおえます。精度はさほど求めません。とにかく全体を訳しておけば精神的な余裕ができるからです。
それが終わると2時間の精度が求められるチェックを行います。ここが一番疲れるところですが、ここの作業の良し悪しが結果に反映されます。
最後に紙に印刷したものでフォーマットのチェックを行ったり、文章全体の一致性を見ていきます。そしてほぼ完成したら、文法ソフトGrammaryを使い冠詞や単複数など見落としがちなものの文法チェックを進めます。
意外と大事なのがここで時間をたっぷりと2時間使うことです。ここはサービスのようですが、実はここで翻訳の評価が決まると思っています。これでリピートが来れば無駄にはなりません。
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翻訳料金が今後上る可能性はほとんどありません。
さらに機械翻訳の質が急速に高まっています。幸い日本語は英語や中国語とは相性が悪い言葉ですから、国際化がさらに進めば市場がなくなることはないと思います。しかし値崩れに対応するためにはTrados、Google翻訳、GrammaryのようなITツールを使い、質を下げずに翻訳スピードを上げて収入を確保する必要があります。
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