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熱効率から見た日本人

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亜寒帯と寒帯遺伝子はGマーク 日本人は暑がりでしょうか。住んでいる場所にもよると思います。グラフで見るかぎり日本人はどちらでもないようです。 表は日本人のミトコンドリア遺伝子の変異の出現頻度を南方中国人と北方中国人とに分けて比較したものです。 ミトコンドリアは細胞内小器官でATPという化学反応をおこしエネルギーを産出します。人間の活動エネルギーはほとんどがミトコンドリアによります。ミトコンドリアはこれ以外にも人間の体温を保つ熱を供給するという重要な役割も担っています。 ミトコンドリアの遺伝子は母系の遺伝子です。それは女性が持つミトコンドリア遺伝子だけが子に伝えられ、男性のもつミトコンドリア遺伝子は捨てられてしまうからです。女性は男性に比べて定住性が高いですから、極北や亜寒帯でなら地域の環境に変化があればそれに適応するためにATPの産出を抑えて熱の産出を増やす必要があります。それがミトコンドリアの変異を生み、北方系のミトコンドリアのタイプが生まれたと考えられます。 このことを専門家たちが検証しました。 →『Natural selection shaped regional mtDNA variation in humans』 Dan Mishmar et al.,。調査の結果もそのようでした。 *** 日本人は平均では54%が体温維持優先の変異遺伝子をもっています。それに比べて中国の南部の人間は35%、北部は64%とはっきりした違いがみられます。 面白いことに沖縄の人は体温維持が悪いM7a遺伝子を24%持っているのに、一方では体温保持効率の良いD4、D5遺伝子も本土人なみに持っています。 アイヌの人はこのD系の遺伝子は本土人よりやや少ないのですが、南方系のM7aの遺伝子は16%もっており、本土人の7.5%をはるかに超えています。 つまり北の人がかならずしも暑がりではなく、南の人が寒がりではないということになりますが、これは日本に来た人たちが何回も異なる方向から入ってきたか、南北に移動したからでしょう。

仁徳天皇とオノゴロ島

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現代語訳『古事記』主要部分 オリジナルの『古事記』の各部分の長さはわかりませんが、福永武彦氏の現代語訳の場合、図のような長さになります。なぜこのような表を作ったかと言いますと、古事記の重点がどこにあるかを知りたかったからです。 祖の代は第一巻に含まれています。 この部分は神話の部分ですが、神話には渡来弥生人と原住縄文人とのやりとりがあります。 巻二の冒頭は神武天皇の話で27頁を使っています。 ここでは弥生人の東遷の話がとりあげられています。 注目したいのは景行天皇から始まり履中天皇までの部分です。 この部分は一見それぞれの出来事を描いているようですが、実は複雑に絡み合った一連の権力闘争と民族闘争の歴史が描かれており、古事記の核心をなす部分です。 とはいえ、ブログで長い解説は禁物です。 *** この部分の中核をなす仁徳天皇をとりあげます。 仁徳天皇は応神天皇とかぶさる部分が多く、応神天皇と同一人物ではないかという話もあります。しかし仁徳天皇は歴史上で確実に存在した最初の天皇だと言われており、巻三の冒頭を飾る天皇であり、渡来人とは思えない振る舞いをする天皇であります。 渡来弥生人はどんなことを日本にもたらしたか、水稲栽培と鉄と機織りです。 渡来人は男が戦いにそして女が稲作と機織りに勤しみました。機織りの養蚕も渡来人を特徴付けるひとつです。しかし仁徳天皇は知りませんでした。さらにそのお妃の磐之媛命(イワノヒメ)も養蚕を知らず、三様に変わる虫を見るために山城に滞在する話が古事記の中にあります。 仁徳天皇は助平な王様だったようです。 お妃のイワノヒメが嫉妬深いにもかかわらずあちらこちらの女性に手を出します。 国生みの最初にでましたオノゴロ島がその物語の中で再び現れます。 「おしてるや 難波の崎よ  出で立ちて わが国見れば  淡島 淤能碁呂島 (オノゴロ島)  あじまさの 島も見ゆ さけつ島見ゆ (あじまさは檳榔の意)」 これは天皇が恋した吉備のクロ姫を太后のイワノヒメが吉備に追い返したために、天皇が淡路島を巡視すると行って、こっそりと吉備に渡る際に淡島にて、つまり淡路島で詠んだ歌です。本居宣長はこの歌をみてオノゴロ島は淡路島の先端にある絵島と同定したのだと思います。 仁徳天皇はつぎつぎと女性に手を出

オノゴロ島同定

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一番南に 蘭嶼島があります 『古事記』は日本最古の書物ですから、教養として読んでみたいと思っていました。 それで福永武彦氏の現代語訳を買いました。また参考のために『日本書紀』の現代語訳も同時に購入しました。 『古事記』を読んで最初に興味をもったのは「オノゴロ島」のことでした。 日本の全土を作ったイザナギ・イザナミのミコトは、さまざまな島を生み出す力を持っていながら、なぜにオノゴロ島という自然の島が必要だったのだろうか。さらには、オノゴロ島に降り立ってから産んだ最初の2つの島は、なぜ役に立たなかったかにも興味をもちました。 神話ですからそう進んだのだと言ってしまえば済みそうなものですが、なぜに自然島が必要だったか、そしてその後の2つの島がなぜ役に立たなかったかを考えてみました。 *** 台湾の南端恒春半島のその東の海上に蘭嶼(らんしょ)という島があります。 日清戦争の賠償として台湾が日本に割譲されると多くの学者がやって来ました。当時この島は南島語の日本渡来のルートにあたると考えられていましたから、民族学、言語学の各分野の学者がやってきて、徹底的な調査を行いました。日本の文化人類学の草分けとも言われる鳥居龍蔵もやって来て、この島を 蘭嶼島と 名づけました 。 蘭嶼島には タオ族という海洋民族が住んでいます。 彼らは民俗学者岡正雄が定義する日本民族の文化的特徴の1番目 「母系的・秘密結社的・芋栽培・狩猟民文化」におおむね該当する民族です。 しかし 調査の結果では、 日本祖語の南島渡来説を確立するまでには至りませんでした。 鳥居龍蔵は興味を失ったのでしょうか、3年後から東アジアに興味を移します。しかし日本時代この島の重要性も重く見た政府は島を隔離して文化を保護しました。おかげでタオ族の文化は損なわれずにすみました。 一方、日本が撤退した後に国民党政府はこの島に囚人と退役軍人の農場を設けて島民の生活を侵害し、また核廃棄物の処理場としてもこの島を利用しています。 *** 蘭嶼島のすこし北には緑島という小さな島があります。 台東市の東の海上のあたりです。 むかしは「火焼島」とよばれていました。日本占領時は無人島でしたが、この島も国民党時代には重大政治犯を閉じ込める監獄

中国語の源流を求めて (4/5)母系で見る

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この図は現在身分証明書上では漢民族として扱われる女性たちの母系遺伝子ミトコンドリアDNA(mtDNA)の分布です。 遺伝子は両親から引き継がれますが父親のmtDNAは破棄されます。その理由はmtDNAが体温への熱配分を司っており気候による環境差を考えたばあい移動が少ない女性のmtDNAの方が現地環境に適しているからです。 図中の線で漢民族の女性は南北で大きな違いがあることが分かります。また東西でも違いがあります。しかし⑥の四川省とチベットの間を除けば差はそれほどは無いようです。この濃い違いはチベット高原の影響によるものと考えられます。 mtDNAは大きくI・II・IIIで分けられています。その分かれ方は気候帯とほぼ一致します。 Iが秦嶺淮河線に該当します。秦嶺淮河線は中国の農業を水耕稲作と麦作に分ける線です。北側が乾燥地帯南側が年間降雨量が1000mmを越える地帯です。 IIは嶺南山脈で分かれる温帯と亜熱帯の線です。この山脈の南方では昔はマラリアなどの熱帯病がはびこっていました。 IIIは不思議な地域です。気候的には黄河中流域と同じ温帯乾燥帯ですがここだけが囲まれています。エリアは河北省と山西省を含んでいます。 中華民族の始祖黄帝・炎帝やシュウウの逸話が多く残されており司馬遷も調査に訪れたことがあります。また古中国語の音韻構造の再構築で名を成したカールグレンはこの辺りを入念に調べました。この辺りで話される晋語には漢人最初の王朝「夏」の名残が残っていると言われています。 一方ではこの地は南北朝の北魏の首都から唐の建国の地と常に鮮卑族の活躍する場所でした。現在鮮卑の人は朝鮮族を除きほとんどが漢人戸籍に組み入れられています。そのせいかも知れません。 母親が子供に伝えるもう一つのものが母語の音韻体系です。子供は1才半で母語の音韻体系を習得し他の言語の音韻を排除するようになります。このmtDNAの違いが奇しくも中国語の方言の分布に一致する事がそれを物語っています。 →最終回 南北の融合