語学の格言「一冊の原書を読み通せ」

わずか一年で読んだ原書のリスト
語学の格言のひとつに「一冊の原書を読み通せ」というのがあります。だいぶ昔から言われていたようです。私の子供の頃はよく大人の会話に現れていました。

ほんとうにそうだろうか、やってみなければ分かりません。さらに原書を一冊読み通すと人生が変わるとも言われています。おおげさな言葉に感じましたが試してみました。

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私が選んだ一冊は『Rich Dad Poor Dad』という本です。『金持ち父さん貧乏父さん』という日本語訳もあります。著者はRobert Kiyosaki氏です。内容は物語風にこどもにファイナンスを教えるいわゆるハウツー本です。

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53才の時、再就職した会社でTOEICを受けました。仕事は中国語が中心でしたからTOEICは関係ないと思っていました。受けてみると意外にも750点と高得点でした。自分の英語にちょっと自信がもてるようになりました。その3年前に英会話のクラスを受ける時「英検二級から始めてはどうですか」と言われていましたからけっこういけるじゃんと思いました。

リスニングが450点リーディンが300点、リスニングは悪くないのですがリーデイングがまだまだです。弱点が分かった時点でTOEIC 750点以上の勉強法を調べました。ほとんどの本に英字新聞や英字雑誌の多読しかないと書いてありました。

言われたらすぐに実行するのが私の性分です。毎朝駅の売店でジャパンタイムスを買って通勤電車で読みました。谷津から神田まで電車内で毎日往復2時間の勉強時間が確保できます。朝夕3ヶ月ほど続けました。すると朝の一時間で一面を読みきることができるようになりました。単語数は2500語ほどですから毎分40語程度の超ゆっくりペースですが読み切るということが出来るようになりました。本もこのペースで読めばいいと考え、丸善に行って『金持ち父さん貧乏父さん』を買いました。

この本を選んだのは経理用語はだいたい分かっていたのと、図が多い点でした。そして一番の魅力は子どものために書かれた本です。親切丁寧に書かれているだろうと思って買いました。

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しかしいざ読みはじめると思い違いしていることが分かりました。そもそも投資や経営をやさしく説いた本とは言え、複雑な経済の仕組みを子どもに理解させるには簡単なものではありません。私は単語は読めても文章はよく理解することはできませんでした。

そもそも賃借対照表を知っているからといって、アメリカの投資家の考え方が分かるわけではありません。さらに私は中学生程度のこどもの言葉の能力を見くびっていました。六才程度で母語能力はほぼ完成レベルに達するとこの頃は知りませんでした。

そこでもう少しやさしい本に変えようかと思い、家に積んである少年少女向けの原書のホコリを払い読んでみました。しかしこちらの方が『金持ち父さん貧乏父さん』よりももっと難しいことが分かりました。なじんでいる分野ならイメージで入れますが情感を共有していない子供の本は単純でも感情がわかずイメージが湧いてこないのです。

いくども挫折した経験がよみがえりました。今度もそうなのかという思いがよこぎりました。

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それでもちいさな希望を確認したのは3ヶ月ほど過ぎて受けたTOEICの試験でした。

リスニングが425点に下がり、リーデイングが330点にアップ、合計755点の5点アップでしたが、TOEICの点数は25点以内は誤差の範囲です。リスニングは誤差の範囲と見るとして、リーディングはあきらかにワンステップ上がっています。苦しいかも知れないが『金持ち父さん貧乏父さん』を読み続けることにしました。

そしてこの単語数7万ほどの小さな本を読み終えたのはTOEIC初受験後の半年以上過ぎた翌年の1月末頃のことでした。

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それで人生は変わりましたか?
たしかに変わりました。夢のようですがその年、私は熱にうなされるように長短原書をあわせて50冊も読みました。ホコリをかぶっていた少年少女向けの原書たちも、すべてきれいにカバーを拭かれて報われる日がやって来たのでした。

さらに英語の経理ができるという事で失業していた私はある中堅商社の香港の経理責任者の職に就くことができました。

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